死ぬまでにしたい10のこと【my life without me】
2006年 01月 14日
テーマの割りに重くない佳作
私は、主人公が死ぬとわかっている映画は嫌い。そういうドラマも嫌い。「泣かせる」ことを前提として、これでもかと大げさな演出ばっかりするから。でも、「みなさん、さようなら」のような佳作もある。要するに、私は「死」というテーマでも淡々と向き合っているものが好きらしい。
この映画は、ペドロ・アルモドバルが製作したのでぜひ見てみたかった。いつもレンタルビデオで貸し出し中で、今日やっと見れました。主人公のアンはガンで2ヵ月後に死ぬ、と宣告されてそれからも誰にもそれを言うことなく、自分の死ぬまでにしたいことリストをつくり、静かにそれを実行していく。自分なら絶対できない、もっと取り乱してしまう、と思うから、アンに共感はしにくいものの、そのストーリーの進め方や淡々とした雰囲気はとても良かった。
主人公はいわゆる白人貧民層(ホワイトトラッシュ)だけど悲壮さはまったくなく、夫も失業ばかりだけど愛情深く、子供達と楽しくトレイラーハウスで暮らし、セレブだけど生活がぐちゃぐちゃな人よりは精神的にとても幸せなんだろうなぁ。そんなアンの死ぬまでにしたいことも、とてもささやかでリアルだ。今から出来ること、と言ったらそういうことしかないのかもしれないなぁと思った。「「死」を宣告されて、初めて長い眠りから目が覚めたようだ」と、そうなって初めて自分の人生を振り返りこれからの残された時間を考える。
都合よくいい男が現れたり、同じ名前の優しい女性が隣に越してきたり、病気の悲惨さは見せなかったり、リアルじゃない映画だがこういう映画にリアルさは求めていないのでいいと思う。むしろ、都合の良い展開のほうが残された家族が幸せになるんだろうな、と先も読めてちょっとほっとする。演出もコインランドリーやファミレスでの出会い、医者のキャラクター、隣に住むアンのエピソード等、細かいところが印象に残る。
それにしても、主役のサラ・ポーリーはやっぱりうまい。うますぎる。セリフは多くなくてもちょっとした視線やしぐさで、多くを語る。透明感があり、とてもリアル。「スイート・ヒア・アフター」の演技も凄かったし。頭も良く、落ち着いていて大好きな女優です。
1つ叶わなかったこと・・・・家族で海に行くこと。でも、アンのいなくなった後皆で海に行くシーンがあり、そこが一番切なかった。
今の私なら何をするだろう?としばし考えてしまった映画でした。
Story
23歳のアンは、母親の家の裏庭にあるトレーラーハウスで失業中の夫と幼い2人の娘と暮らし。だがある日、彼女は突然腹痛に襲われて病院に運ばれる。そして、医師から余命2ヵ月の宣告を受ける。若さのせいでガンの進行が早く、すでに全身に転移してしまっていた。アンはこのことを誰にも打ち明けないと決意し、ノートに死ぬまでにしたいことを書き出していった。そしてその日から、彼女はその秘密のリストを一つずつ実行していくのだった…。
NOTE
監督:イザベル・コヘット
出演:サラ・ポーリー マーク・ルファロ スコット・スピードマン レオノール・ワトリング
2003年 カナダ/スペイン
死ぬまでにしたい10のこと オフィシャルサイト
2006.1.14 ★★★☆
by usamari
| 2006-01-14 19:49
| あ/か/さ行の映画